静岡県の魅力 ~経済・産業に視点をおいて~
(3)西部地域
西部地域は、浜松市、磐田市、掛川市、袋井市、湖西市、御前崎市、菊川市、森町の7市1町で構成されています。
西は愛知県、北は長野県、東は牧之原台地に至るまでの範囲です。この地域は遠州灘に面した平野部と北の山間部からなっており、地域内に流れる天竜川は電力ならびに用水の供給源となっています。
この地域の主要産業は輸送機械、楽器、電気機械などの製造業です。
その中核を担っている都市が浜松市です。浜松市は、人口約80万人、製造業事業所数(従業者4人以上)1,956事業所、製造業従業者数68,341人、製造品出荷額等18,309億円と静岡県内トップの工業都市であり、全国の政令指定都市との比較では、事業所数5位、従業者数5位、製造品出荷額等 11 位となっています。
中核となっているのがオートバイ車、自動車、船外機などが輸送機械です。
オートバイ産業は、昭和 21 年、戦時中に使用された無線機用電機エンジンを自転車の車体に取り付けたオートバイ「ポンポン」が誕生したのがきっかけです。平成 28 年の浜松市およびその周辺における二輪車生産台数は国の二輪車生産台数の4割を占めています。また、現在では KD(ノックダウン)方式(現地組立方式)輸出を含め内需よりも輸出が多く、生産金額で9割以上が世界各国に輸出されています。
このオートバイ産業は昭和 30 年以降、自動車、農機具、モーターボート、船外機など多種多様な業態に変化を遂げていきました。特に軽四輪自動車は、昭和30年に日本で初めて浜松地域で製造されて以来、産業として目覚ましい発展を遂げ、全国の生産台数の5割近くを占めています。
楽器産業も浜松市および周辺市の主要産業の1つです。
発祥は山葉寅楠が、浜松尋常小学校で故障した米国製オルガンを修理したのがきっかけです。また、彼はオルガンの将来性や国際化の社会的意義などを思い飾り職人であった河合喜三郎に協力を求め、試作を開始しました。
時代背景にも恵まれ、ヤマハ、河合楽器製作所の大手企業を軸に、数多くの新規参入企業も加わり、楽器産業は主要産業へと成長していきました。現在、ピアノは浜松市および周辺市により全国出荷量100%を誇っています。さらに電子技術を活用した電子オルガン、電子ピアノ、電子ギター、電子キーボードなどの電子楽器も楽器産業のすそ野を広げ、産業の発展に大きく貢献しています。
電気機械は、西部地域の各種分野の技術集積と静岡大学工学部とが有機的に結びついて生まれました。昭和40年頃までは主要産業に入っていませんでしたが、エレクトロニクス技術の急速な進歩により成長しました。さらに最近では光技術をベースにした光産業を軸にしたフォトンバレークラスターがスタートしています。
このように西部地域は製造業を中心とした産業ではあるが、果樹、野菜、花木などの産地としても全国から高い評価を得ています。
高級メロンとして人気がある温室メロンは、大正末期から栽培がはじまり、長年の技術の蓄積を通じて高度な生産方式を確立すると同時に、美しい形や芳醇な香りなど徹底した品質管理を行うことにより出荷量は日本一となっています。また、青島みかんを中心とする三ケ日みかんも甘さと酸味のバランスが全国から高い評価を得ています。
また、青島みかんを中心とする三ヶ日みかんは甘さと酸味のバランスが絶妙で、全国から高い評価を得ています。さらに三ケ日ミカンは、生鮮食品としてははじめて、機能性表示食品(骨代謝のはたらきを助け、骨の健康に役立つことが報告されているβ-クリプトキサンチンが含まれている)として消費者庁に受理されました。
この農業も製造業同様に、技術革新や高い品質管理を重視した生産活動を行うことにより高付加価値農業を展開しています。